ものづくりの精神

 戦後の日本には、多くの技術が入ってきました。ですが、日本はその技術を、そのままマネをして、同じものを作り続けることはありませんでした。例えば日本の得意な技術の一つに、小型化があります。また、合理化をきわめていくというのも、同じく日本が得意なものです。こうした、根気強さ、悪く言えばねちっこさが日本のものづくりを支えてきた精神のひとつと言えます。ですから、日本という国は技術開発が得意技であり、ものづくり大国になりえたのです。

 例えば電卓の歴史を見ていきましょう。世界で最初の電卓が作られたのはイギリスです。そして、その翌年、シャープが電卓を販売することになります。これ、実はイギリスで作られた電卓を改良したものでした。発売当時、電卓の価格は新車が一台購入できるくらいの金額でした。そして1970年ごろには10分の1程度まで値段も下落し、小型化が進みます。そんな最中の1973年、シャープは世界で初めて、液晶を採用した電卓を発売することになります。それまでの電卓は、小型化したとはいえ、乾電池を何度も交換しなければいけない電池食いの商品でした。シャープの液晶技術で作られた電卓は、商品価格は確かに高かったのですが、バカ売れすることになります。液晶は、従来の電卓に比べると、電気消費が100分の1という大きなメリットがあったのです。乾電池を何度も交換していくのであれば、コストパフォーマンスでは大きく影響に軍配が上がった結果です。今の電卓は、ソーラーパネルが付いていて、電池交換など経験したことのない人がほとんどですよね。そうなったのは、シャープが成し遂げた、液晶の実用化あってのことなのです。ただ、こうした話は、古き良き時代、になってしまいました。

 日本は今、技術力や開発力では決して劣ってはいないにしても、瞬発力がないというのはよく言われることです。ものづくり大国になる前の日本は、実はかなりのハイスピードで技術開発を行っていました。それができなくなってきたのは、企業が大きくなり、守りの姿勢、保守的な思考に偏ってきたためだとも言われています。もちろん為替の問題など、日本にとって、逆風があったことも確かなのですが、一度成功した日本はものづくりの精神を忘れかけているのかもしれません。

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