職人とものづくり

 製造業という言葉が使われるまで、日本でものを作る人はすべて職人でした。士農工商でいえば、工にあたる人がすべて職人であったわけです。そして日本人にとって、職人は尊敬すべき技術を持った人でもあります。ですが、海外では職人というのは、苦労してお金を稼がなければいけない成功者ではない人、というイメージが強いのです。職人や技術者は、日本では自分の仕事に誇りを持っている人が多いと思うのですが、多くの国では劣等感を感じる仕事なのだそうです。子供のなりたい職業アンケートで、職人が来る国は日本だけなのは、ものを作り出す仕事に対する考え方が、そもそも異なるからです。日本もバブル期に、ブルーカラーが敬遠された時代もありましたが、今はそうした考え方は、古いというイメージですね。

 職人とは、プロフェショナルであるべきと言うのが、日本のものづくりの根底にある意識です。ですが、最近はプロフェッショナルではない職人も出てきました。例えば、昔は花形職業でもあったIT系。その中で最も人手が必要なプログラマーは、今は自分たちをデジタル土方、IT土方などと呼ぶこともあります。ホワイトカラーの職種でありながらブルーカラーのような仕事、というようなニュアンスです。本来頭を使って仕事をするホワイトカラーではなく、職人のような仕事だと感じているのなら、自らをIT土方と呼ぶ人たちは、プログラマーとしてプロフェッショナルであろうとするようも先に、まずは仕事をどうにかこなすだけで精一杯なのかもしれません。そうしたプログラマー職の人たちを、ものづくりに携わる人たちだと思えないのは、誇りが感じられないからなのかもしれません。

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