ものづくり・ひとづくり

 製造業におけるものづくりの技術は、もちろん変化し続けるものです。より高度な技術が作り出され、より品質の良いものが求められ、常に新しいものが作られ続けている世界で、伝統的な技術を伝えていくということは、実は簡単なことではありません。

 誰にでもできる、というと語弊がありますが、すぐに覚えられる単純作業というのは現に、どんどん海外に仕事が流れていっています。また、韓国などがそうですが、日本の技術者の引き抜きが多く、技術を開発するよりも、技術を持った人を使って技術が必要なものを作ってしまう国もあります。といっても単純なコピーだけではなく、その場所で必要とされる技術のみを取捨選択したことが韓国家電の勝因です。どちらかといえば、日本はムダとも思えるような多機能を売りにすることもありますから、死相がそもそも異なるのは間違いありません。ですからもちろん引き抜かれてしまう日本にも問題はあり、これは日本の技術者が、会社から与えられる自分の評価に満足していないからでもあります。特に製造技術など、進化が求められる分野では、自分の仕事に誇りとプライドを持っている人も大勢いるでしょう。ですが、彼ら、彼女らは自分の待遇や評価に、決して満足はしていないということになります。不況の影響で、大勢の技術者、職人がリストラされ、海外で再就職を果たしたのは、日本のものづくりにとって大きな損失になりました。一企業にとっては、大量の人件費削減がなければそもそも生き残れなかったという時代の汚点です。

 日本のものづくり、その精神と技術が途切れてしまうこと、人材がほかに流れていってしまうことは、ものづくり大国の再建にとって大きな課題でもあります。部品を作ることと、人を作ることはまったく別物です。いかにものづくりとひとづくりを進めていくのか、それが同時にできるのかが、ものづくり再生のためには欠かせない要素かもしれません。

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