ものづくりという言葉

 ものづくりとはそもそも何でしょう。物作りや、物造りというように、漢字を使わないのは、そもそもものづくりという言葉が大和言葉だからです。大和言葉というのは、大陸から入ってきた漢字や、外来語を訳してできた言葉ではないものを指します。中国から漢字が輸入されて日本語として定着していますが、それ以前から使われていた言葉が大和言葉。訓読みの漢字は、もともと漢字を日本人にわかるように翻訳したものです。もともとあった日本語に漢字をはめて作ったといえばわかりやすいでしょうか。ですから、音読みする熟語は大和言葉ではない、ということ。ちなみに大和言葉と和語は、学術上では区別されるものもありますが、ほとんど同じものです。

 さて、ものづくりという言葉が、特に生産や製造の意味で使われるようになったのは、実は最近です。バブル経済真っ最中には、ブルーカラーとして敬遠されてきた現場や職人の仕事が再び注目されてきたここ最近のことなのです。

 では、ものづくりと製造業という言葉、この二つでは何が異なるのでしょう。製造業とは、英語で言えば、the manufacturing industry。manufacturingは機械を使って作るもの、大量生産するもの、と言うような意味です。industryが、産業や業、事業です。そしてものを作り上げる時に、日本人の技術力や、精神性を反映させたものを作ることがものづくり。製造業という言葉は、もともと英語を訳してできた言葉です。英語の意味を考えると、日本人が考える「ものづくり」とは異なることがわかるのではないでしょうか。そしてものづくりは、製造業だけではありません。手作業でものを作り出す職人も、ものづくりを行う仕事ですよね。製造業は確かに、日本のものづくりの中でもっとも大きなものですが、製造業イコールものづくりではないのです。

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